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高配当投資家に人気のオイルメジャーであるロイヤルダッチシェルの2020年5月時点最新の銘柄分析となります。
わたし自身かつては同銘柄をポートフォリオの主力として投資していましたので、これから投資するか迷っている方やホルダーの方の新たな発見になれば嬉しいです♪
この記事を読むと分かること
- ロイヤルダッチシェルの概要
- 同社の財務状況
- 同社の株価推移
- 同社の株主還元実績
- 今後の見通し
- 投資する際のオススメの買い方
ロイヤルダッチシェル(RDSB)の概要
基礎情報
社名:Royal Dutch Shell Plc
本拠地:ハーグ(オランダ)
創業:2005年(起源は1907年)
財閥:ロスチャイルド閥
事業:総合エネルギー(石油、天然ガス、電力)
セクター:エネルギー
市場:欧州、東南アジア、アメリカ大陸
競合:エクソン・モービル(XOM)
時価総額:$172B(約17兆5,000億円)
PER(20/3/1):11.4倍
PBR(20/3/1):1.25倍
配当利回り(20/3/1):8.52%
ロイヤルダッチシェルは欧州最大のオイルメジャーで世界的を股にかけた事業規模と圧倒的なキャッシュ創出力を有する老舗企業です。
投資をしていない方ですら貝殻(シェル)のロゴを街中のガソリンスタンドやF1番組等で目にすることも多いのではないでしょうか?イタリアの名門フェラーリのスポンサーとしてもお馴染みですね。
株式市場でのロイヤルダッチシェルの魅力は何と言ってもずば抜けた配当利回り(6%前後)と、英国のADR銘柄ゆえ配当金に現地課税が発生しないことです。
連続増配実績こそありませんが過去70年以上減配せず、幾多の戦争や経済危機でも配当金を株主に払い出し続ける株式会社本来の姿を全うしている点も素晴らしいですね。
また他のオイルメジャーに先んじて脱石油依存の事業ポートフォリオを目指し、アジア/アフリカ地域における再生可能エネルギーを中心とした電力販売事業にも注力しているのも評価に値します。
追伸:2020年4月のQ1決算にて減配が発表されました。(4/30時点)
Starting this quarter, the Board has decided to reduce our quarterly dividend to 16 US cents per share.
残念ながらコロナ影響による原油価格の不透明感から、ロイヤルダッチシェルはQ1の配当金を$0.47⇒$0.16と▲66%もの大減配を決定しました。
これは第二次世界大戦(WWⅡ)以来初の減配となり、配当投資家には大きな衝撃ですね。
ロイヤルダッチの沿革と歴史
1800年代後半、シェルは英国を拠点にした物流会社として力を付け、当時蘭国から石油の開発/販売を営んでいたロイヤルダッチの業務委託先として後に欧州最大の石油帝国を築く手足となっていました。
その後1900年代に入り、ロックフェラー財閥擁するスタンダード・モービル(のちのエクソンモービル)と競争が激化したロイヤルダッチは、正式にシェルとの業務提携を実施。
その後2005年に完全合併、今日のロイヤル・ダッチ・シェルが誕生します。
同社は第二次世界大戦後の石油需要拡大期から1970年代のアラブ系産油国の台頭までの間、世界の石油相場を独占していた旧セブン・シスターズ(独禁法で解体され生まれた7大オイルメジャー)の一角を担っていました。
こうした背景から同社は英国とオランダに起源をもつため、その株式は欧州市場とニューヨーク市場でそれぞれティッカーコードが3つ存在します。
証券取引所 | 現地課税率 | |
【RDSA】 | AMS(ユーロネクスト) | 15% |
【RDSA】 | NYSE(米国) | 15% |
【RDSB】 | NYSE(米国) | 0% |
【RDSA】はオランダのユーロネクスト/アムステルダム市場(AMS)に上場しているものと、ニューヨーク市場(NYSE)に蘭国ADRとして上場しているもので同一コードの2種類が存在します。
このうち日本の証券会社から購入できるのはNYSEに上場している蘭国ADRの【RDSA】と英国ADRの【RDSB】です。
気をつけなければいけないのは、【RDSA】はオランダ株としての現地課税が15%発生します。
一方で【RDSB】は英国のADRとしてNYSEに上場しており現地課税0%なので、基本的にはこちらを購入することをおすすめします!
RDSBのCEOベンの経歴は?
投資の神様ウォーレン・バフェットも言うように投資先企業の経営陣が誠実で優秀か?という観点は重要です。
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その点、ロイヤルダッチシェルCEOのBen van Beurden氏は2019年度世界で最も影響力のある経営者として第二位に選出されています!(The “Best CEOs in the World 2019: Most Influential Chief Executives”)
オランダの名門デルフト工科大学で化学工学の博士号を取得後、同社に入社。注力事業となる液化天然ガス事業に従事しディレクターを務めたのちCEOに就任。
かなりのハイキャリアで30年以上に渡って同社に勤めています。生え抜き勢として今後のエネルギー業界を牽引していくことが期待されます。
ロイヤルダッチシェル(RDSB)の財務分析
投資の際に重要になる"売上/純利益/営業キャシュフロー/キャシュフローマージンの増減"と"負債の状態"に注目していきましょう。
PL(損益計算書)
資源価格の下落を受けここ三年の売上高は3,000億ドル台で頭打ちになっており、微減傾向を辿っています。
エネルギー事業はビジネス原価が高く粗利/営業利益率は低めに抑えられていますが、売上が低迷していることを考えると生産コストを抑え利益を確保しているとも捉えられるので経営努力が感じられますね。
※2018年は売上や利益の項目が増加していますが、これは運転資金の増加を受けたもので実態は17年⇒19年でほぼ横ばいです。
BS(貸借対照表)
エネルギーや公益企業の多くがそうであるように固定資産が大半を占めていますが、流動資産の現金で200億ドルも保有しており貯め込んでいますね。
これは採掘/精製するための大型設備を有しているからです。逆に言えば設備投資/維持コストが掛かるので投資キャッシュは嵩みます。
負債の部は非常に安定しています!さすが世界のオイルメジャーだけあって手元のキャッシュが潤沢でほぼ無借金経営です。
欧米企業には珍しく負債/純資産倍率が1倍と、まるでひと昔前の日系企業のような安全経営をしています。
一方で逆に捉えると手元に積み上がった現金を上手に使えていない『経営効率が悪い』という評価もされてしまします。
後述する株価が冴えないのはこうした背景も影響しており、今後大型買収など資金の使い道に注目したいですね。
CF(キャッシュフロー計算書)
営業キャッシュフローマージンは10%台で安定してキャッシュを稼いでいることが分かります。
これだけ原油価格が低迷しているにも関わらずFCFをきちんと創出しています。
借金の負担が少ないので財務キャッシュを見ると借入金の返済のほとんどを配当金の支払いと自社株買いに使用しており株主還元に積極的なことが伺えます。
RDSBの株価と石油価格の関係性
ロイヤルダッチシェルの株価は特も悪くも原油価格(GSCI Crude OIL Price)に左右されます。
販売している商品価格が高騰すればその分マージンスプレッドが広がるので利益が出る一方で、逆もまた然りです。
※ちなみに欧州圏の石油価格はブレント石油価格、北米圏の石油価格はWTI(ウエストテキサス・インターミディエート)を参照します。
2013年頃から米国とカナダで起こったシェール革命により、これまで採掘されていなかったシェール層から膨大な石油や天然ガスが採掘され始め世界のエネルギー需給は一変しました。
エネルギー供給の過多によりオイルメジャー各社は原油価格の大幅な下落に直面します。
現在はOPECでの石油減産など需給のコントロールをすることで価格は反発しつつありますが、かつてのような繁栄は難しいと考えれます。
またESGの観点から化石燃料である石油や石炭関連の銘柄は機関投資家から嫌気されやすく、株価への下落圧力になります。
直近では昨年ノルウェー政府の年金基金*1が石油関連会社に対する資金を引き揚げたことや、金融業界ゴールドマン・サックス*2が同関連銘柄への融資を削減するなど、厳しい事業環境が続いています。
RDSBの強み(再生可能エネルギーへの転換)
売上セグメントを見るとIntegrated Gas(LNGや再生可能エネルギー)の割合が微増傾向にあり、原油の供給過多を受けUpstream(油田採掘)などを縮小させています。
石油価格がかつてのような水準になることが期待できない今日、他のオイルメジャーに先駆け同社は風力や太陽光などの再生可能エネルギーを中心とした電力供給事業に参入しています。
直近2020年2月の発表では、来年2021年を目途に子会社を通じて日本でも仮想発電所事業*3に参入することが決まっています。
これは太陽光発電のために各家庭に備え付けられた蓄電池をが同社がネットワークで集約管理し、電力需給のバランスをコントロールすることで災害時に電力不足に陥った各家庭に優先して電力供給することが可能になるなどの効果が期待されています。
RDSBの株主還元方針(自社株買い/配当)
"Our policy is to grow the US dollar dividend in line with our view of the underlying earnings and cash flow of Shell."(Dividend Policies)
ロイヤルダッチシェルは欧州企業でありながら米ドルベースでの配当還元の強化を打ち出しています。また配当金だけでなく資本効率に応じて自社株買いによる株主還元をとることも明示しています。
2019年度の同社のフリーキャッシュフローは約200億ドルだったのに対し、配当支払いで150億ドル+自社株買いで100億ドルと手元の現金を食いつぶしてまで株主還元に力を入れています。
FCF以上の還元は短期的なインカム投資としては有難い一方、株式会社の本来の姿である事業投資による成長で企業価値(株価)を上げるというより稼いだお金と預金を切り崩した株主還元によって株価を支えようとしており、個人的には結構リスクが高いと思っています。
今後も自社株買いと配当支払いを続けていくためには純利益を底上げするか、FCFを高めないと今ある株主還元も先細りする可能性は大いにあります。
エクソンモービル(XOM)との違い/比較
『手元の高配当か連続増配か?』
よくロイヤルダッチシェル【RDSB】は競合エクソンモービル【XOM】と引き合いに出され、ADRの税制、配当利回り、脱石油事業化を評価するならRDSBで、財務的な安定感と連続増配実績をとればXOMという線引きがされることが多い印象です。
例えば、増配無し高配当のRDSB(約8%)と連続増配のXOM(約5%)ではその差は60%に上り、仮にXOMが年間5%ずつ増配したとしても同水準になるまで約12年間(複利で8年間)掛かる計算です。
理論上RDSBは利益と配当性向を維持すれば良い一方で、XOMは8年間増益し続けなれば同じ水準になれないことを考慮すれば、あくまでインカム投資としてはRDSBに軍配が上がりますね。
そんなエクソンモービル(XOM)の銘柄分析はこちらからどうぞ!
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【XOM】エクソンモービルの株価&配当分析【連続増配株】
続きを見る
RDSB:今後の見通し
2019年ロイヤルダッチシェルが配当還元に充てたキャッシュ総額は約150億ドルです。
同社の発表によれば2021年~2025年のFCFは合計1,250億ドルに上り、年平均+250億ドルになることが予想されています。
仮に現在のDPSを維持したとしても、年間+1兆ドルものFCFからで自社株買いを続行し、自然とDPSを引き上げることで増配する公算が大きいです。
つまり、自社株買い(Buyback)により発行済み株式数を償却することで、相対的に配当原資を切り上げ自然な増配を実現します。
直近19年の例では三菱商事が減益したにも関わらず、増配を実現できた時と同じ手法です。
そのため同社はキャッシュの創出と配当を通した更なる株主還元にコミットすることで、増配率は少なくとも2桁規模になることが想定されています。
とはいえ、もちろんこれは2018年~2020年にかけて現在既に実施されている250億ドル規模の自社株買いが無事に完了した後のお話になります。
しかも1バレル60ドルで計算されたFCFなので今後5年で原油価格が反発するという希望的観測によるものです。
マクロ経済環境が芳しくない中、ロイヤルダッチが力強くキャッシュを生み出し続けてくれることを祈るばかりです。
RDSBを買うならNISA口座がオススメ
最後にロイヤルダッチシェルを購入する際のオススメポイントをご紹介します。
ポイント
①非課税枠を使って配当金を無税する
②17時の欧州市場を見てから指値しよう
ロイヤルダッチシェルとNISA口座の相性が良い理由
英国ADRの【RDSB】は支払われる配当金に対して現地での源泉徴収がありません。つまり国内課税(20.315%)が発生しないNISA口座で保有すると配当金を丸々受け取ることができます。
現地課税の無いADR(英国やスイス)×NISA口座の組み合わせは配当金を最大化したいインカム投資家に人気の投資法ですので、ロイヤルダッチを購入したい方はぜひ非課税口座を活用しましょう。
但し、気をつけて頂きたいのはNISA口座は損益通算ができないため損切りとの相性が悪く、株価が下落トレンドにある銘柄を持つのは危険です。
ロイヤルダッチのような高配当株をNISA口座で購入する際は株価が大きく下がたタイミングで保有するか一生保有する覚悟で使用した方が賢明です!
欧州市場のRDSAを見ればRDSBの株価を予想できる!?
日本時間23時30分に開場するNYSEに先駆けて、17時から欧州市場が開きます。
先に欧州での【RDSA】の値動きを把握しておくと、その日のNYSE市場での値動きを予想することができます。上場先が違うだけで、基本的に同じ会社の株価になるので途中サプライズが無い限りはほとんど同じ値動きをします。
Google検索で『ams rdsa』と検索するとGoogle Financeでサクッと確認できます。
事前に欧州市場の値動きをみておくことで、少しでも安く指値買いすることをすることをオススメします。
いつも読んで下さってありがとうございます。
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